院長処理の核心数値(令和8年7月14日時点)
KEY FIGURES
長期貸付金(院長個人宛)
2.38億
法人BS上の「資産」
実態は回収不能
実態は回収不能
提案退職金(現金払い)
2.00億
院長への現金支出
退職所得として優遇課税
退職所得として優遇課税
院長への実質経済便益
4.38億
現金2億 + 貸付相殺2.38億
現金支出は2億円のみ
現金支出は2億円のみ
出口コスト合計(目標)
5億円
院長への支払い総額
(借入5.21億は別枠)
(借入5.21億は別枠)
⚑ 長期貸付金2億3,804万円の正体
医療法人は剰余金の配当が法律で禁止されている(医療法第54条)。院長大川博樹氏は、法人が黒字を出していた時期(令3.3期:純利益+5,852万円等)に、配当の代替として「法人から院長個人への貸付」という形で資金を引き出し続けた。
残高推移:令7.3 → 2億2,728万円 / 令8.3 → 2億3,804万円(+1,076万円増加)
元本返済ゼロ・利息も未回収で残高は増え続けている。院長自身も「返すつもりがない」と読み取れる。実態はすでに院長の個人財産。
残高推移:令7.3 → 2億2,728万円 / 令8.3 → 2億3,804万円(+1,076万円増加)
元本返済ゼロ・利息も未回収で残高は増え続けている。院長自身も「返すつもりがない」と読み取れる。実態はすでに院長の個人財産。
純資産の実質評価 — 貸付金控除後のリアルな数字
NET ASSET REALITY
貸借対照表上の純資産 vs 実質純資産
BS上の純資産(令8.3.31)
5.49億円
資本金2,000万 + 繰越利益剰余金5.29億
−
長期貸付金(院長個人・回収不能)
2.38億円
元本返済ゼロ・残高増加中
=
実質純資産(買収バリュエーション基準)
3.11億円
これを買収価格算定の出発点とする
院長出口スキームの全体像 — 5億円の内訳設計
EXIT SCHEME
院長への価値移転の構造(現金支出2億円で実質4.38億円の経済便益を提供)
【キャッシュフロー】
鳳應会(買い手)
現金 2億円
→
大川院長(個人)
退職金 受取
法人BS(貸付金)
2.38億円 相殺・消滅
→
大川院長(個人)
返済免除 受取
院長への実質経済便益 合計
4.38億円
(現金支出は2億円のみ)
【院長出口の経済計算】
| 項目 | 金額 | 性質 |
|---|---|---|
| 退職金(現金支払い) | 2億円 | 現金アウト |
| 貸付金の返済免除 | 2.38億円 | 非現金・帳簿処理 |
| 院長が受け取る実質総額 | 4.38億円 | 経済的便益計 |
| うち現金支出(実際の出費) | 2億円 | キャッシュベース |
| うち非現金(帳簿上の損失) | 2.38億円 | 法人が損失計上 |
長期貸付金2.38億円 — 処理方法の3択比較
LOAN RESOLUTION
推奨 ✓
方法A 退職金と相殺処理
退職時に、貸付金2.38億円を「退職金・解決金の一部に充当」として相殺する合意書を締結。
処理の流れ:
① 退職金総額4.38億円を合意
② うち2億円は現金払い
③ うち2.38億円は貸付金との相殺
④ 相殺後、貸付金残高ゼロ
処理の流れ:
① 退職金総額4.38億円を合意
② うち2億円は現金払い
③ うち2.38億円は貸付金との相殺
④ 相殺後、貸付金残高ゼロ
✓ 法人帳簿がクリーンになる
✓ 院長への贈与税リスクなし
✓ 実態と帳簿が一致する
✓ 最も法的にクリーンな構造
✓ 院長への贈与税リスクなし
✓ 実態と帳簿が一致する
✓ 最も法的にクリーンな構造
△ 退職金総額4.38億円の損金算入可否を税務で確認要(後述)
要検討 △
方法B 正式に債権放棄
法人が院長に対して「貸付金2.38億円を放棄します」と書面通知する方法。
注意点:
院長側で贈与税の課税対象になる可能性がある(2.38億円の贈与として)。
贈与税率は最大55%のため、院長の手取りが大幅に目減りする。
注意点:
院長側で贈与税の課税対象になる可能性がある(2.38億円の贈与として)。
贈与税率は最大55%のため、院長の手取りが大幅に目減りする。
✓ 法人の処理としてはシンプル
✗ 院長側に最大1.3億円の贈与税
✗ 院長が合意しない可能性大
✗ 方法Aで回避できるリスク
✗ 院長が合意しない可能性大
✗ 方法Aで回避できるリスク
リスク大 ✗
方法C 買収後に貸倒処理
新経営陣が「回収不能」として、貸倒損失に計上する方法。
問題点:
税務上の貸倒損失の要件は厳格。特に旧経営者(関係者)への貸付は疑義を持たれやすい。支払能力の喪失を客観的に証明できない場合、損金算入が否認され法人税負担が増す。
問題点:
税務上の貸倒損失の要件は厳格。特に旧経営者(関係者)への貸付は疑義を持たれやすい。支払能力の喪失を客観的に証明できない場合、損金算入が否認され法人税負担が増す。
△ 院長の了解を得やすい
✗ 税務調査で否認リスク高
✗ 関係者間取引として特別調査対象
✗ 貸倒要件の立証が困難
✗ 帳簿上の処理が後回しになる
✗ 関係者間取引として特別調査対象
✗ 貸倒要件の立証が困難
✗ 帳簿上の処理が後回しになる
結論:方法Aによる「退職金と一体の相殺処理」が最適
院長への提案を「退職金2億円の現金払い」ではなく、「退職パッケージ合計4.38億円(うち2億円現金、2.38億円は貸付金免除として充当)」として設計する。これにより贈与税リスクを回避しつつ、法人の帳簿から貸付金を合法的に消去できる。院長から見ても4.38億円の受取りとなり、出口として十分に合理的な条件。
退職金の税務上の取り扱い — 損金算入限度額の確認
TAX DESIGN
【法人側】損金算入の適正額計算
役員退職金の税務上適正額の算定式
適正額 = 最終月額報酬 × 在任年数 × 功績倍率
試算ケース①(保守的)
月額80万円 × 30年 × 2.5 = 6,000万円
試算ケース②(中程度)
月額100万円 × 30年 × 2.5 = 7,500万円
⚠ 2億円を損金算入するには
月額133万円 × 30年 × 2.5 = 約2億円月額133万円(年収1,600万円水準)の報酬実績が必要。院長の実際の月額報酬を確認必須。
※功績倍率は通常2.0〜3.0。理事長・創業者・30年以上在任の場合は3.0も認められる場合あり。在任年数はH8.8(平成8年8月)開業から30年で計算。
【院長側】退職所得の課税計算(有利)
退職所得の課税(給与所得より大幅に有利)
退職所得控除額(勤続30年の場合)
800万円 + 70万円 × (30年 − 20年) = 1,500万円控除
課税退職所得金額(退職金2億円の場合)
(2億円 − 1,500万円) × 1/2 = 9,250万円
✓ 院長の税負担(概算)
所得税・住民税を合わせ約3,500〜4,000万円程度手取り:約1.6〜1.65億円
通常の役員報酬として受け取るより大幅に節税。院長にとって退職金形式は有利。
※2.38億円の貸付金免除分は、相殺処理(方法A)とすれば「退職金の一部」として退職所得扱いにできる可能性あり。税理士による事前確認が必要。
税務戦略の要点
院長の実際の月額報酬明細を入手することが最優先。損金算入できる退職金の上限が確定する。仮に月額100万円(年収1,200万円)なら損金上限は7,500万円程度となり、2億円全額の損金算入はできない。超過分(約1.25億円)は損金不算入となり、法人に法人税負担が生じる。一方で院長側の退職所得優遇は報酬水準に関わらず享受できる。両者のバランスを税理士と設計することが必要。
「5億円」に含まれていないコスト — 買収の真の総コスト
TOTAL COST
| コスト項目 | 金額(概算) | 性質・備考 |
|---|---|---|
| ■ 院長出口コスト(5億円の内訳) | ||
| 退職金(現金払い) | 2億円 | 現金アウト ← メイン支出 |
| 長期貸付金の返済免除(相殺処理) | 2.38億円 | 非現金・帳簿上の処理 |
| 小計(院長出口) | 4.38億円 | 経済的便益(現金支出2億円) |
| ■ 5億円に含まれていないコスト | ||
| 銀行借入金(北洋銀行・道銀) | 5.21億円 | 短期2.4億+長期2.82億。承継または返済。年間返済約8,000万円。 |
| 従業員退職金(一部) | ~1億円? | 169名(正社員152名)。全員引き継ぎ前提なら不要。リストラ時は発生。 |
| 運転資金(診療報酬2ヶ月ラグ) | ~2億円 | 売掛金2.1億円は2ヶ月後回収。引渡し直後の資金繰りに注意。 |
| M&Aアドバイザリー・法務・税務 | 500〜1,500万円 | 弁護士・会計士・デューデリジェンス費用 |
| 設備修繕・老朽化対応(築25年) | 未確認 | 6階建・築25年(平成13年築)の修繕積立状況を確認要 |
| 実質総コスト(概算レンジ) | 10〜13億円 | 院長出口2億(現金)+借入5.21億+その他2〜6億の合計 |
5億円は安いか高いか — 療養病床131床の「許認可価値」
VALUE CHECK
帳簿ベースの資産価値(令8.3.31)
| 資産項目 | 簿価 | 実勢(推定) |
|---|---|---|
| 土地(5,356㎡) | 9,180万円 | 1.5〜3億円 |
| 建物(築25年・6階) | 4.81億円 | 1〜2億円 |
| 現金・預金 | 9,430万円 | 9,430万円 |
| 診療報酬売掛金 | 2.10億円 | 2.10億円 |
| 長期貸付金(院長) | 2.38億円 | 0円(回収不能) |
| 実質資産合計(概算) | — | 5.5〜8億円 |
| 有利子負債(承継) | — | △5.21億円 |
| 純資産(時価ベース概算) | — | 0〜3億円 |
療養病床ライセンスの価値(帳簿外)
医療療養病床131床 — 取得不可能な希少資源
現在の医療規制では新規の療養病床許可は事実上取得不可能。既存ライセンスの市場価値:
131床 × 500万円 = 6.55億円(保守値)
131床 × 1,000万円 = 13.1億円(上限値)
加えて:
・北海道特別老人医療対策事業認可
・介護保険事業者番号(通所リハ)
・小樽市内4番目の老人専門病院ブランド
・ヘリカルCT・FCR等の医療機器(使用中)
131床 × 500万円 = 6.55億円(保守値)
131床 × 1,000万円 = 13.1億円(上限値)
加えて:
・北海道特別老人医療対策事業認可
・介護保険事業者番号(通所リハ)
・小樽市内4番目の老人専門病院ブランド
・ヘリカルCT・FCR等の医療機器(使用中)
ライセンスを含めた実質的な取得価値
10〜16億円相当
院長出口2億円(現金)+借入5.21億承継 ≒ 約7億円の総支出に対して
結論:5億円(出口コスト)は全体として「買い得」の水準
院長出口コスト5億円(現金支出は2億円)+銀行借入承継5.21億円 ≒ 総コスト約7億円(現金ベース)。これに対して取得できるのは時価6〜13億円相当の療養131床ライセンス+土地建物。病床ライセンスの価値だけで買収コストを上回る可能性が高い。ただし病院は現在赤字(営業CF△7,816万円)であり、黒字化のための経営改革が条件。BEPまであと1.7%(2,254万円の増収)という近さは、改善の現実性を示す。
ネクストステップ — 院長処理スキームを動かすための優先行動
NEXT ACTIONS
1
院長の月額報酬実績の把握(最優先)
退職金の税務上の損金算入限度額が確定する。月額報酬×在任年数×功績倍率の計算根拠を固めるため、過去の法人税申告書・役員報酬明細の取得が必要。デューデリジェンスの最優先事項。適正額を超える退職金は法人に課税コストが発生する。
2
北洋銀行・道銀との事前折衝(並行して)
借入5.21億円の承継条件、根抵当権の付け替え、院長個人保証の解除について、院長との本交渉前に銀行側の意向を確認する。銀行が借入承継に応じなければスキーム全体が崩れる。メインバンクの北洋銀行(小樽中央)担当者への非公式打診から始める。
3
退職金・貸付金相殺処理の法的スキームを弁護士・税理士と確定
方法Aの「退職金4.38億円(うち2億円現金、2.38億円貸付金相殺)」構造について、医療法・法人税法・所得税法の各観点から問題がないことを事前確認。特に2.38億円の相殺分を「退職所得」として扱えるかの税務解釈が重要。
4
院長への初期接触(d6対策:間接ルート経由)
TDBが「経営情報の秘匿性が強い」と評価する院長への直接アプローチは避ける。北洋銀行担当者・地域医師会・紹介医療機関の関係者など間接ルートを通じた信頼醸成が先。「買収」という文脈ではなく「事業継続・地域医療の維持」という文脈で接触。2026年秋〜冬(令9.3期赤字拡大が見込まれる前)を交渉窓とする。
5
法的取得スキームの確定(役員変更 or 合併 or 事業譲渡)
医療法人社団(持分なし法人)の取得には3つの法的手段がある。①役員変更(理事長交代):最シンプルだが全債務も引き継ぐ。②吸収合併:鳳應会が青優会を吸収、北海道知事の認可が必要。③事業譲渡:貸付金等の不要資産を除外して移転可能、ただし診療報酬の指定が新法人で再取得必要。スキームによって2.38億円の貸付金処理の方法も変わる。
院長処理スキーム — 総括
SUMMARY
DIRECTOR EXIT SCHEME — 最終設計案
スキームの核心
| 退職金(現金) | 2億円 |
| 貸付金返済免除・相殺 | 2.38億円 |
| 院長への実質経済便益 | 4.38億円 |
| うち現金支出のみ | 2億円 |
| 銀行借入承継(別枠) | 5.21億円 |
| 実質総コスト(現金ベース) | 約7〜8億円 |
判断の根拠
✓ 貸付金2.38億円は実態として院長の財産であり「咎めない」は合理的
✓ 退職金2億円は院長に退職所得の税優遇を提供し交渉しやすい
✓ 現金支出2億円で4.38億円の経済便益を提供できる効率的な構造
✓ 療養131床ライセンス価値(6〜13億円相当)が総コストを上回る可能性
⚠ 退職金の税務上の損金算入限度額は月額報酬実績の確認後に確定
⚠ 銀行5.21億円の承継合意が全体スキームの前提条件
⚠ 院長接触は間接ルート・信頼醸成型で12〜18ヶ月のスパンで設計
✓ 退職金2億円は院長に退職所得の税優遇を提供し交渉しやすい
✓ 現金支出2億円で4.38億円の経済便益を提供できる効率的な構造
✓ 療養131床ライセンス価値(6〜13億円相当)が総コストを上回る可能性
⚠ 退職金の税務上の損金算入限度額は月額報酬実績の確認後に確定
⚠ 銀行5.21億円の承継合意が全体スキームの前提条件
⚠ 院長接触は間接ルート・信頼醸成型で12〜18ヶ月のスパンで設計